みみ・はな・のどの病気
「人工内耳」について
近年、医学の発展はめざましく、昔は空想の世界の出来事でしかなかった人工臓器の実用化が飛躍的に進んでいます。人工心臓、人工腎臓、人工肝臓など、その種類はからだ全身に及んでいます。その中でも、「人工内耳」は、完全に人体に埋め込まれ、体外に大きな機器の必要もなく、半永久的に使えるきわめて実用性の高い人工臓器です。
人工内耳は、今まで全く治療法のなかった内耳性高度難聴者の聴力を改善しようとするもので、1970年代後半から臨床応用が始まり、この30年間に大きな成果を挙げてきました。最近の報告では、3歳で人工内耳の手術を受けた香港の6歳の子が、広東語のほかに英語と北京語の3言語を、同年代の子と同程度に獲得したとのことです。
さて再生医学の分野は、方法論から生物学的な方法と、コンピュ-タ技術を用いた人工臓器に二分されます。人工内耳は、コンピュ-タ技術を駆使し、言葉を電気刺激に変え、蝸牛神経刺激することにより、「きこえ」を実現させようするもので、まさにコンピュ-タと脳が接続された初めての人工臓器といえるでしょう。最近では、より中枢の蝸牛神経核を直接刺激する聴性脳幹インプラントも実用化されつつあります。
現在、宮城県内では東北大学病院と東北労災病院で人工内耳の手術が行われ、難聴児や聴力を失った多くの患者さん達の聴覚獲得を実現させています。